50歳で始めた通訳訓練

通訳者のブログ。会社員からフリーランス通訳者に転身。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2019-07-08 印象を残す人

鮮やかな印象を残す人のお話です。

出会ったのは昨年の夏。強烈な日差しのとても暑い日に屋外業務でした。

「暑い」
とは一言もおっしゃいません。さすがに涼しい顔はしませんが、ごく普通に淡々と仕事を進めていきます。私も見習ってつまらない愚痴を言わずにすみました(でも半端なく暑かった…)。

移動の車中でいろいろと話ができました。他人の話を聞くのがとても上手で、それが自然。何ら作為を感じません。これも難しいながらも見習わないと、と思いました。


屋内に戻ってからの会議通訳では的確で自然な訳。


そして数か月後からときどき仕事を紹介してくださるようになりました。ありがたいことです。私にも経験がありますが、お客さんに
「この方ならだいじょうぶです」
と伝えるにはある種の覚悟が必要です。


その後も様々な場面で(思いもかけないところで)組んで仕事をする幸運に恵まれています。組織に属さないが故に多くの人と継続的に顔を突き合わせるということのないフリーランス。しかしこうした出会いもある。


こんなことを書こうと思ったのは、最近
「出会い月間」
とでも呼びたくなるくらい意外なことが続いたためです。
・面識のない通訳者から仕事に誘われる
・知人が私の同時通訳を聞いて声で気づいた
・以前にスペイン料理店で知り合った同業者と現場で組む
・初めて組む通訳者が私が以前に書いた現場申送書を読んだことがある
・以前の学習仲間と初めて現場で組む

2019-07-07 電子化

遅れて少しずつ電子化というお話です。

同時通訳でよくご一緒する通訳者が10インチ液晶画面のタブレットを巧みに使っていらっしゃいます。資料が紙に印刷してあっても電子版で画面に出して参照することもたびたび。
「慣れると便利ですよ」
とおっしゃるのですが、注記を書き込めないことや見たいページを素早く表示できないのではないかと思うことでなかなか見習えずにいました。


出先では8インチ画面の Android タブレット ZenPad 3.8.0 (ASUS製)を使ってきました。LTE(電話回線接続)のインターネット接続で「音声電話のない巨大なスマートフォン」といった感じです。出先でひととおりのことができるので重宝していました。

しかし、メールを書くときにやや不便を感じます。
・(ハードウェア)キーボードがない
・使いやすいメールソフトウェアがない
という点です。業務関係のメールは入力がしやすく内容を見渡せる広い画面で作成したいと思っていました。


そこで MicrosoftSurface Go LTE を購入しました。OS が Windows10 なので自宅で使っている環境をそのまま持ち出せます。


そして先日ついに通訳現場で紙の資料なしで仕事をしてみました。その日の同席通訳者さん(前出の方とは別)が10インチのタブレットと12インチのノートPCを使ってそれぞれに日本語資料と英語資料とを表示しています。私も見習って Surface Go と ZenPad で資料を参照しました。

資料を見るうえでの支障は特に感じませんでした。むしろ机の上で場所を取らない有利さが光ります。

もう少し使ってみようと思います。

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人気の弁当「横濱チャーハン」。崎陽軒の調理なのでシウマイも2つ入ってます。
桂歌丸が好きだったといいます。桂鷹治さんのツイート

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2019-07-05 体重を減らす

体重の増減のお話です。

1980年代から体重はほとんど変わりませんでした。1987年に作ったジャケットやトラウザーズがいまだにちょうど良い大きさです。安上がりでいいですね。

ところが…

2019年の6月に一時的に増えた体重が戻らなくなりました。少し外食が多くなって増え、出張先でおいしいものを食べて運動量が減ったためです。増分は 2,000グラム(2kg)です。


体重の調整はいつも 300g 単位で簡単なはずなのですが、今回はなかなか戻りません。意識して摂取する熱量を減らして運動量を増やすことにしました。

急いだり野心的なことをするつもりはなく、少しずつ体重を減らしていこうと思います。とりあえず米飯による糖分が多いダルバート(ネパール定食)やミールス南インド定食)はしばらくお休み。北インドの大きなナンも半分まで。

さっそく 400g 減りました。この調子でいけばすぐに以前の体重に戻ると思います。

2019-07-04 コンサルティングの通訳

マッキンゼーボストンコンサルティンググループ(BCG)、ベイン、アクセンチュアといった企業は通訳サービスをよく使うというお話です。


まずはセミナーのお知らせ。

【8/4】コンサル業界での通訳~経験者が語る成功の秘訣
2019年8月4日・日曜日 午後1時半から 神保町(東京都千代田区
主催:一般社団法人日本会議通訳者協会

お話をされる緒方さんにはいろいろとお世話になっています。


大手コンサルティング企業は国際的な実力主義。顧客を担当するチームはたいてい多国籍です。共通語は英語の場合がほとんどですね。英語の運用能力が通訳学校の最上級クラスの受講生より上じゃないかというコンサルタントはたくさんいます。英語を使って大学院で討論して論文書いて、日々英語でパワーポイントスライドを作り、レポートを書き、プレゼンテーションをして、上司や部下とシビアな話をしています。5か国混成チームの現場に出向いたこともありましたが、みなさん英語が達者でロンドンかニューヨークの事務所みたいな雰囲気でした。

通訳の場面はコンサルタントが顧客と話をするときが主です。


私は以前の職場でグループ企業の再編や基幹システムの変更をずいぶんと担当しました。そのため戦略コンサルティングやITコンサルティングの通訳内容にはかなり親しみがあり、取り組みがいを感じています。


プロジェクト体制のコンサルティングで通訳をするときには会議通訳と勝手がかなり違います。予定外のことが多い。いや、予定があってないようなことが多い。時間を予約した幹部向けプレゼンテーションや合同の会議を除くと実に流動的です。通訳負荷が高い日もあれば待機時間ばかりの日もあります。「ものごとは決まったとおりに進行すべき」と考えている人には厳しいかもしれません。

それでもコンサルタントとその顧客が衝突したり力を合わせたりして問題を解決していく現場に居合わせるあの感じは特別です。


今回紹介したセミナーでは生の声がいろいろと聞けると思います。

 

2019-07-03 技術の問題であることが多い

「よし、次こそはしっかり聞いて理解しよう」
「この次にはわかりやすい文で訳出しよう」

通訳者や通訳学習者はこうした決意が大好きです。

しかし、決意は通常それだけではほとんど何も生みません。変化をもたらすには具体的な思考・行動が必要です。


以前にもこのブログで引用した大前研一氏のことばには真実があると思います。

人間が変わる方法は三つしかない。

一つは時間配分を変える、二番目は住む場所を変える、三番目は付き合う人を変える。この三つの要素でしか人間は変らない。もっとも無意味なのは「決意を新たにする」ことだ。

大前研一(著)『時間とムダの科学』プレジデント社(2005)

私がなんとか通訳者らしきことをして生計を立てていけるようになったのも
勤務先を退職する
という蛮行に出たからです。今になって思うと大前氏の言う「三つしかない」のうち二つが起こりました(引っ越しはしませんでしたが、一日の大部分を過ごす場所は変わりました)。


献血に出かけて待ち時間に野球選手イチローの語録を読みました。そこにあった警句が目を引きます。

ミスショットの原因は気持ちの中にあると思っていたのです。だけど違っていました。技術によるものでした。
(夢をつかむ イチロー 262のメッセージ、出版社:ぴあ)

そう、通訳がうまくできないのは、まず第一に技能が不足しているから。どれだけ
「次こそは」
と思っても、そこには改善を約束する実体がない。


通訳者であり通訳エージェントの経営者でもある丹埜段さんのブログ記事には示唆するものがとても多いと思います。

通訳のトレーニングについて、思うことすべて  


カフェ「プロント」のカレースープパスタ。塩味が軽く、スパイスで食べさせるのは卓見。担担麺にも通ずるところが少しあるような。

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2019-07-02 空気の容積

部屋が広いといいなあ、というお話です。

用務地がたまたま市街地から離れていて、かつ観光地に近いのは通訳者にとって良い知らせかもしれません。

通訳予算が厳しくても高級宿泊施設を使う可能性が高いのです(選択肢がない)。そしてそのホテルは高級リゾートだったりします。

今年はそうしたことが2度ほどありました。日系の有名リゾートホテルチェーンと米国高級ホテルチェーンとに滞在。


目を閉じて寝てしまえば学生向け4畳半も高級ホテルも同じかなと思っていましたが、実はそうでもないことがわかりました。占有面積 38平方メートルの部屋はドアを開けた瞬間
「これは…広い」
と思います。おなじみのビジネスホテルチェーンだと20平方メートルが上限でしょうか。だいたいは 15平方メートル、いままでの最小(最狭)記録は 12平方メートルです。

部屋が広いと視界が開けて圧迫感がないのがいいですね。それに加えて助かるのが空調をあまり意識しないですむことです。空気の容積が大きいので暖房・冷房共に「雰囲気温度の調整」という感じです。

寝具が有名な米ホテルチェーンのベッドはさすがでした。もぐりこんだ瞬間
「これは違う」
と感じます。高価格には理由があると思い知った次第です。


空気の容積といえば通訳ブース。某地方都市の国際会議場のブース(6室)の広さに感心しました。ホテルの部屋と同様、広いと閉塞感がなくて空調の効きもおだやかですね。そして机が広い。ノートPC、タブレット、資料、飲み物を楽に置けました。これはありがたい。通訳者のことをよく考えて設計したことがすぐにわかります。


トゥールダール(キマメ = 樹豆 のひきわり)と鶏のチェティナード風(じゃがいも入り)。何度か作るうちにいろいろとわかってきました。たまねぎは色づくまで炒めるのですが、薄切りとみじん切りとでは味まで変わってきます。

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2019-07-01 職業通訳者として(おそらく)最も重要なこと

通訳の仕事に出るとき、最も重要なことについてのお話です。

指定された場所に指定された時間に存在することです(身体で、または回線接続で)。


これは実はさほど簡単ではないと思っています。

たとえば首都圏の電車事情。
・路線相互乗り入れが進み、事故・故障が広範囲に影響する
・各停・急行・区間急行・準急・特急・快速・通勤快速・快速特急といろいろある
・主要駅の出口は20くらいあり、乗り換え地下通路は迷路

訪問先が大きな施設の場合、集合場所を明確に決定して理解しておかないと目的地に到達できません。敷地内にバスが走っている規模の工場も多い。西門から南門まで徒歩20分ということもありえます。新館と別館、A棟とB棟など、危険がいっぱいです。

似た名称の建物もありますね。恥ずかしながら私は「丸ビル」と「新丸ビル」とは同じものだと思っていました。「新丸ビル」というくらいだから、「旧丸ビル」をとりこわして建てたのだろうと思い込んでいました。

幸いなことに新丸ビルと丸ビルとは隣でしたのであわてずにすみましたが、離れていたら現場に入る前に心拍数を上げてしまうところでした。


その日に使う資料や用品をきちんと持って時間までに正しい場所に到達して顧客と合流できれば(気分的には)仕事の半分が終わった気がします。それだけ集合には危険が多いと思います。

オンライン参加のときも顧客から受領した電話番号が古かったり会議IDが間違っていたり、自宅のインターネットルーターが雷で故障したりといろいろ危険は潜んでいます。

そういえば会場で通訳機材の接続を前日に確認し、その後に一部片付けたときに接続を間違えたこともありました。「音が出ない・聞こえない」という状況には本当にあわてます。


現場には魔物がいる。そう思っていたほうがいいですね。この目で見てこの耳で聞くまでは何も確実ではない。


特に変わったとこのない、ありふれたインド料理店の昼食に見えます。ところが。豆のカレーがものすごくおいしい。トゥールダール(樹豆 = キマメ のひきわり)を使ってたまねぎやトマトでしっかりとうまみを出しています。キマメの独特の味と香りもあって忘れがたい一皿になりました。注文したときに店の人が
「ダール…」
と口ごもったので、
「仕込んでないなら他のにしますよ」
と言ったら
「OK、ダールOK」
と言って調理師に何か言っていました(ベンガル語?)。

15分くらい待ったので、おそらくたまねぎを炒めるところから作ってくれたのだろうと思います。スパイスの香りが立っているできたての味でした。

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