50歳で始めた通訳訓練

通訳者のブログ。会社員からフリーランス通訳者に転身。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2019-01-29 めぐり合わせ

業務に出ると様々な出会いがあります。

通訳学校に通っていたときに読んだブログや通訳学校・通訳エージェントのインタビュー記事に登場した人といっしょに仕事をすると感慨がありますね。「あちら側とこちら側」だったのがこんどは(とりあえず)同じ側に立っている。

その中でも最大級だったのはインタースクール東京校の講師と共に同時通訳をしたとき(2017-12-07 恩師4人と)。


そしてつい最近も影響を受けたブログの筆者とご一緒することができました。日本人のカレーの鬼才がていねいな調理をするインド料理店でじっくりと話ができました。文字で伝わることには限りがあるのを感じます。
「ああ、あの話にはそんな背景があったのか」
と点と点とがつながるような感じがしました。


出張先の会議場で座ってばかりの仕事なので昼を軽く済ませたのですが、帰り道に「りんごとカスタードのデニッシュ」を買い食い。インド野菜料理の店(肉料理なし)に行ったら定休日。なぜか並びの中国料理店でこんなものを食べた私って…。

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2019-01-27 目標から逆算

実業の世界ではよく
「目標を設定し、現状を把握し、その2点の差を認識して埋めていく」
という話を聞きます。

高すぎる目標を設定すると「埋めかた」がわからなくなることもあるでしょう。しかし、高い目標となるべき「水準」は知っておいても損はない。むしろ有益じゃないかとも思います。通訳の場合ならすぐれた通訳者の訳出を聞くのも良いですし、もっと抽象的に
「話者が英語(日本語)で話したらきっとこんな感じ」
という想像上の姿を水準として感じても良いはずです。
(参照:過去記事「2017-07-06 生の迫力--イケてる通訳者」)

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目標と現状との差を認識するには手っ取り早く試してみるのも効果的です。ここでとても役に立つのが通訳学校。講師が音声素材を再生してくれますし、他の受講生もいてほどよい緊張感もあります。


これをもう少し改まった感じにしたのが通訳技能の試験やコンテスト。

通訳技能向上センターのビジネス通訳検定を受けたことがありますが、「他流試合」「出稽古」という感じがしてなかなか良い体験でした。シュアーのSM58が立派なマイクスタンドに乗ってずらりと並ぶのは壮観です。

国際会議場で通訳者用ブースを使う体験なら日本会議通訳者協会の同時通訳グランプリ。今年も東京外国語大学の会議室を借りることができたようです。予選は録音審査なので、さほど身構えなくても参加が可能。グランプリに向けたワークショップもあります(一般参加者も申込可能)。


西新橋のバングラデシュ料理店「トルカリ」。帰国したシェフの元2019年2月01日にメニュー一新だそうですが、留守番チームによる料理も実においしい。レストラン料理というより家庭寄りなのでしょうか。これがなくなるのも惜しいかな、と思ってしまいます。たぶんエクセルで作ったメニューもいい感じ。

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2019-01-26 良く寝る

年末年始休みは計16日。本を読んで通訳練習もできました。昨年末は仕事を少し詰め込んで「追われる感じ」があったので、良い休暇になりました。

今年(2019年)は無理のないように業務日を組み合わせようと思っています。いまのところ睡眠時間を削るようなことになっていないのでまずまず良い感じ。

1月の業務は同じお客様のところで数日間続く仕事が2種類発生し、異種の資料に追われることがなかったので気分的に落ち着けました。

睡眠をしっかり取ると1日中快調です。考え方を少し変えるほうがいいのかもしれません。1日24時間から寝る時間を「天引き」のように確保して、その他の部分で時間のやりくりをする。豊かな生活ってこのあたりにあるんじゃないかと思い当たることから今年の仕事は始まったというところです。


休みの間に久しぶりにゆっくり歩きました。「同時通訳の小径」です。

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2019-01-17 誠意ある回答--「どうしたら経験が積めますか」

日本会議通訳者協会のウェブサイトに「通訳なんでも質問箱」という連載があります。人材派遣会社でも通訳エージェントでも通訳学校でもない、通訳者の立場からの回答としてとても参考になると思います。

最近の質問は

経験を積むには?

でした。

異なった角度からの二つの回答はとても適切だと思いました。


エージェント系列の通訳学校でそれなりの成績で通訳科を修了すれば必ず仕事が来ます。私の場合も修了する前にも仕事の打診はありましたが、修了してからはっきりと仕事の質は高く、件数は多くなりました。系列外のエージェントも
「あの学校を修了したのなら」
ということですぐに仕事を回してくれることが多かったですね。遠回りなようで一番の早道なのかもしれません。


「純国産」とか「留学経験なしでも」といった、自分が聞きたい情報ばかりに注意が向かってしまう人もいるようですが、通訳サービス市場で十分に報酬を獲得している人のほとんどは何らかの形で外国との縁がありますね(親の都合で居住・留学・勤務で駐在・婚姻で居住など)。私は地元の公立中学で初めて英語に触れ、外国人と話をしたのは大学1年のときでした。しかしその後勤務先の都合で英領香港に3年駐在し、インターネット接続が一般化する前だったのでいわゆる「英語漬け」の環境でした。財務会計管理会計は米国の教科書を使いましたし、その他の読書も英語ばかり。テレビ・ラジオも英語か広東語なので必然的に英語放送ばかり。今思うとだいぶ鍛えられたのだと思います。

こんなことを書いたのは外国との接点がない人の意思をくじくためではなくて、通訳者として世に出るにはどうしたらいいかを客観的に考えてみる一助にしてほしいと思ったからです。それでは接点がなかった人・外国語が得意でなかった人はどうしたかというと、「通訳学校の授業は大変だ」などと泣き言を言わずに以下のようなことをしていたはず。

参考資料:TOEICスコア900点からはじめて通訳になる方法

私はこんな勉強をして、通訳になった ~辞書一冊暗記しました~


たまにはデザートも作ります。抹茶寒天。インド料理で豆を煮るようになり、小豆にも親しみが…。

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2019-01-15 逐次通訳練習--例の課題

通訳学校の講師をしたことがあります。

受講者の最大の課題は聞いて理解すること。これは私にとっても(そしておそらくどの通訳者にとっても)同じ。

特にノートを取ることがとても大切なように思ってしまうことの弊害は意外に大きいと思います。通訳の聞き取りは書き取りの練習ではありません…。何とかして多く書き留めておこうという意識・行動が話の理解を妨げてしまうことがとても多い。

このことはこのブログで以前に何回か書いていますね。以前からの読者には繰り返しとなって恐縮です。

2017-04-22 通訳学校に通うにあたり--5 ノート注意報 


こんなことをまた思い出したのは、2019年になってから少し内容の密度が高く語りが速めの素材で逐次通訳の練習をしたからです。訳出をしようとしたら、聞いている間はわかったつもりになっていた話の内容の影が薄くなっているではないですか。
「ああ、あの問題だ」
とすぐに思い当たりました。早口を追いかけてノートを取ろうとして、くっきりと理解するように聞けていなかったのです。

落ち着いてノートを取るようにしたらずいぶんと楽になりました。訳の精度もずっと改善されます。早口だと思っていましたが、実際はそうではないこともわかってきます。「早口に聞こえる話し方」をする話者なんですね。


サンバル粉を作ります。時計の2時から 米、とうがらし、キマメ、クミン、コリアンダー、フェヌグリーク

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こちらは油に香りを移すスパイス。とうがらし、フェヌグリーク、ヒング、マスタード、クミン。

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2019-01-14 おっとりといきましょう

他の多くの仕事と同様に、通訳でも
ダメージコントロール
がとても重要です。

  • 大量の資料が直前に電子ファイルで送られてくる
  • 現場に到着したらなかったはずの資料が机に積んである
  • 上着の内ポケットから(作らないはずの)スピーチの原稿が出てくる
  • 知らされていたのとは別の階で会議が始まっている
  • 地下鉄が止まってパートナー通訳者がまだ来ていない
  • 昼食を持ち込んだら弁当の手配があった
  • 電話会議の接続先が2か所で、1か所は携帯電話を使うんですって
  • 印刷してくれた資料の背景が黒塗りで書き込みができない

こんなことはごく普通に起こります。

そんなとき、ほぼ最善の対応は
「ま、いっか…」
と心の中でつぶやくことです。騒いでどうなることでもない。

現場ではにこやかに余裕を漂わせて仕事をします。同席通訳者と
「ちょっとー、どーゆーこと?」
「ひどいよねー!」
と盛り上がるのもはしたない。
「いやー、なかなかですね…」
苦笑い笑顔で対応です。

改善提案は仕事が終わってから建設的に伝えればいい。そのときも決して相手を責めず。

顧客に価値を提供するのが通訳者の仕事。それにつながらないことはできる限りそぎ落とす。ゆったりと構える通訳者は同業者からも歓迎され、高く評価されているようです。あれがひどかった、こんな不当な扱いを受けたと(特にソーシャルメディアで)言って回る通訳者はそれなりに遠巻きに見られるようになります。


コメダ珈琲店で何か食べるとなると、これ。フィッシュフライバーガー。

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