50歳で始めた通訳訓練

通訳者のブログ。会社員からフリーランス通訳者に転身。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2017-07-13 少しずつ

最近異なった場面で複数の方から
「声がいいですね」
と言っていただきました。

日本語で話していたときのことです。

そういえば最近やや広い会議室でマイクロフォンなしの逐次訳でも楽に声が出ていた気がします。

緊張するとのどが詰まる感触があり、声の響きが失われるときが以前にありました。最近はのどや肩がゆったりとした感じで声が出せている気がします。小さな声で話すのでのどが詰まり気味になりやすい同時通訳でも少し改善がある気がします。

良い方向に変化があったようなので、英語を話すときにもこの方向でいきたいと思います。同時通訳で英語を訳出するときには響きを失った声を使っている気がしていますので…。

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南アジア料理以外も。餃子は左1列が野菜、右1列が豚肉。

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2017-07-12 そこが聞きたい

通訳業務中の聞き取り・訳出は一定に運ぶものではありません。流れが良いときもありますし、難しいときもあります。

そして、英語を日常使う顧客が通訳者を使うとすれば、そうした「山場」で苦労したり不明瞭な点を残したくないから。

その日の通訳業務や通訳者に対する印象はこうした「山場」、つまり全体のごく一部で決まってしまうことも多いのではないかと思います。


通訳学校の授業においてもよく理解できてさほど苦しまずとも訳が出る部分とそうでない部分とがあります(不思議なもので、人によってその部分がかなり違うのですが)。運が良い・悪いではなく、
「それが通訳だ」
と淡々と受け入れたほうが学習者のためになる気がします。

ブログ Erika's English-Japanese Interpreting Service で山下さんがこう書いていらっしゃいます

「ここはダメだったけどこっちはできたから良いでしょ」は、プロの仕事では通用しません。 (通訳学校と入門科3(指されたくない時ほど指される不思議

 


早めの到着は通訳者を救うことが多い。

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神奈川県綾瀬市スリランカ料理店「ロイヤルグリーン」の昼食。大豆たんぱくのおかず、豆カレー、水菜の和え物、鶏カレー、かぼちゃの煮物、ポルサンボル(ココナツ・たまねぎ・とうがらし・乾燥魚の和え物)に辛くないとうがらしの素揚げ。

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2017-07-10 買う側は常に高いと思うもの

通訳者が手にする報酬を仮に 40,000円としましょうか。終日同時通訳だと3人ですから 120,000円。仮設ブースの設置はいくらでしょうか。通訳機材エンジニアが1人終日駐在するとして 30,000円に仮設ブースと送信コンソールで 20,000円としておきましょう。

顧客に配る受信機を 20台 として1台1日 1,000円なら 20,000円。

ここまでの積算で 190,000円。通訳手配会社の事務経費と利益で 30% とすると 57,000円。受注額は 247,000円。おそらく大きくは外していないと思います。

お客さんはこれだけ支払っている。

通訳者は自分が 40,000円の仕事をしていると思いがちですが、顧客は 247,000円の仕事をしているという目で見ています。

 


暑くなりました。

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2017-07-07 仕事のご褒美は仕事(2)

同時通訳の受信機を数十ほども使う会議で3日間同時通訳でした。いやー、よくしゃべった…。

このような仕事をすると経歴書に「会議通訳」として書けるのでしょう。

仮設ブースが立派で快適でした。強制換気・LED照明・高級ヘッドフォン(使いませんでしたが)・ハンガー・ひざかけ完備です。扉の建てつけも良好。通信機器も最新鋭(アマチュア無線をしていたのでエンジニアさんと話が合いました)。

組んだ通訳者もすてきな人ばかり。いっしょに昼を食べ、いろいろと話ができました。

なにより手ごたえを感じたのは質疑応答ががっちりと組み合わさったこと。通訳者として
「ほっと一息」
ですが、しばらくするとじわじわと喜びを感じます。


通訳を介した会議での質疑応答は通訳者にとって一種の試金石といえそうです。質問をしっかり理解しないと訳に情報が漏れたり話者の論理に沿わなくなったりします。その訳を聞いた回答者の答えは的を外すか内容が足りないものになります。そしてその回答をまた通訳するのですから…。

こんなふうになっちゃう可能性が常に存在します。

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今回は以前の

2016-03-04 仕事のご褒美は仕事

という記事を思い出して書いてみました。

2017-07-06 生の迫力--イケてる通訳者

「心の中に『イケてる通訳者像』を持て」
と思っています。実在する人間ではなくても、心に「そのときの理想像」があれば自分の訳出を評価したり学習の方針を考えたりできるはずだと思っています。

しかし。

しばらく前に「イケてる通訳」を聞く機会があり、そのすばらしさに相当驚きました。やはり実在の声には迫力がありますね。

音声付きの動画を偶然目にしました。なめらかな語りが続きます。ところが画面を見たら話者は外国人で英語で話している(口の動きが英語)。この動画が制作された事情から同時通訳であることは間違いありません。

いままで一度も聞いたことのないような自然な訳。話者が日本語を話しているような訳。恐れ入りました。これが同時通訳で実現できるとは。

その日は衝撃だけでしたが、翌日からなぜ自然に聞こえるか考えてみました。まあ、理由はよく言われることばかりでしょうね。

  • 理解の速さ
  • 原文理解を支える言語運用能力(聞き取り時)
  • 背景知識
  • 適切な訳文を素早く拾い出して組み合わせる能力
  • 訳の品位を担保する言語運用能力(発話時)

理解力を伸ばすのは厳しく長い道のりなのは確かなので、これは地道に進めています。短期的なものは何かないかと考えたところ、不自然な間を排除すると訳出の品位が上がるはずだと思いつきました。英語から日本語にするとき、間が空いても自然な箇所とそうではない箇所があります。日本語だったら切らない部分に空白があると一気に「同時通訳臭く」なりますね。

自然な間合いで訳文を出していくには「溜め」(buffer)が必要です。原文解析をしている間にも訳出を止めずに(待たずに)出していく。

●● ●●● ● ●●  と理解しつつ、訳は ● ● ● ● ● ● ● ● と出していくわけです。

業務でこの点を意識してみたら、部分的に改善がありました。あまり無理をすると追いつけなくなって訳が崩壊するのであくまで限定的にですが…。

 


通訳者仲間とちょっとしたお祝い。名店の天丼はさすがの味でした。あくまでも軽く揚がっています。味付けも上品。

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2017-07-01 主体性はあったのか

ブログ「定年からの通訳デビュー」でモコちゃんパパさんが

実態は流されているだけみたいなものなのですが

と書いていらっしゃいます。

この感覚、とてもよくわかる気がします。仕事の打診があれば断らず、その他のことも誘いがあれば赴いてみる。私の場合通訳学校にも通訳業務にも、そして日本会議通訳者協会にも、すべて周囲からの働きかけに「最小限の自発性」で入っていっただけ。

自分で思い切って決断したのは以前の勤務先を退職することくらいだった気がします(これは大きな決断ですが)。その他はさまざまな出会いと運と…。

  1. 昔からの英語学習仲間にインタースクールを勧められ、他校を検討することなく入学。
  2. 同校に2年通った時点でちょうどプロ速成科が設置され、第1期生として拾い上げられる(私のどこを見て選抜試験を受けさせてくれたのかはインタースクール7不思議の1つかも)。上記速成科の修了試験の雰囲気が授業とがらりと変わり、それが私には良い方向に働く。※アルク 翻訳・通訳のトビラ 現役通訳者のリレー・コラム 遅れてやってきた通訳者 心の持ちよう 参照。
  3. 通訳者として世に出て7つ目の仕事が大当たり。以前の職場の知識が生きる業務が数か月続き、通訳者としての基本ができると共にエージェントに安心感を届けた。

こうして振り返ると大きな曲がり角はどれ一つとして自分で機会を作ったものではないのですね。すべて向こうからやってきた。

同じ流されるなら、自己ベストの流され方をするまで。

 


横浜駅周辺にはスカイビルの「マントラ」以外インド人が調理するインド料理店がないと思っていましたが、鶴屋町に「シャグン」が開店していました。野菜を使ったカレーがとてもおいしい。写真の時計の3時方向に見えるのがベイガンマサラ(茄子のカレー)です。すばらしい出来でした。 ※ 後日追記:この店は閉店しています。

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2017-06-30 自営業者は孤独か

通訳を本業にする前に勤務していた企業では社員はほとんど「ファミリー」でした。特に冠婚葬祭がそうですね。結婚式でも葬儀でも善意の動員ですぐに手伝いの人が集まります。ときには上司から号令が下ります。
「それは勤務ですか(No と言えるのですか・残業代出るのですか)?」
などという野暮な問いはありえなかった時代。


自営業の通訳者(フリーランス通訳者)は会社員ではありません。会社員でない立場を楽しんでいる通訳者も多く存在します。私もその一人。
「任されて請け負う」
ことにはひりひりした緊張感が伴います。寿司職人が包丁を持ち、大工が大工道具を携えて仕事に出るように、通訳者はイヤフォンや用語集を用意して現場に赴きます。

今日はこちら、明日はあちらと現場を渡り歩くことも多い。顧客が毎日違うことはあたりまえのように起こりますし、同席する通訳者も目まぐるしく変わります。

それでは自営業の通訳者にはつながりがないのか、というとそうでもありません。私の場合の例を挙げてみましょう。

  • 通訳学校で共に学び、今ではときどき現場で一緒になる仲間ができた
  • 通訳学校で教えを請い、今ではときどき現場で一緒になる恩師ができた
  • 定期的に訪れ、そのたびに暖かく迎えていただく顧客ができた
  • 同業者の集まりで勉強会をしたり講演会を企画する仲間ができた
  • もう20年も前からの英語の学習仲間がいる
  • そして、このブログを読んでくださる皆さんがいる


今は特に日本会議通訳者協会の年間最大イベント「日本通訳フォーラム2017」の準備で忙しいながらも、仲間と取り組む手ごたえや新しい出会いの喜びを感じています。

 


そして、南アジア料理研究部のみんなもいる。
溜池山王駅近くの「SONIA」。マサラドーサ・サンバル(豆と野菜のおだやかなカレー)・カレー1品・ココナツチャトニ・ライスで 1,100円。

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